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滄州武術館日本支部訪問記


墨林窯 東京で林學先生より意拳・双手剣を学んでいる永原智聡と申します。

今回、林先生と親交の深い古謝雅人先生をお尋ねし、滄州武術館日本支部の練習に参加させて頂きましたので、その体験を皆さんの後学となるよう報告したいと思います。

これまで、古謝先生の劈掛拳講習会には三回参加しており、次回9月2日に開催される四回目の講習会では遂に套路に入るという事で、基本功と基本招式をきちんと固めて置こうと思い、練習に参加させて頂きました。

滄州武術館の普段の練習は19時から始まるそうなのですが、古謝先生から、練習の前に軽くウォーミングアップをするので、18時にホテルの前で待つようにいわれ、18時にホテルの前で待っていましたが、古謝先生は現れません。18:20頃になるとやっと現れ、これが沖縄タイムかと実感しました。

体育館に向かう車中で、「練習はどんな感じでしょうか?」と古謝先生に尋ねると、「ゆる~い感じ」と笑っておっしゃるので、「これは楽そうだ」と思ったのですが、ゆるいのは古謝先生の雰囲気だけで、練習内容はとてもハードでした。

 

体育館に着くと、ウォーミングアップとして、まず外周700mのトラックを3周走りました。続いて、50mほどの坂道をダッシュで3往復、連環歩で2往復しました。私は長拳で走らされることには慣れていたので、この位ならまだ余裕でした。

そして、立木を相手に前蹴りを100本、抱え膝蹴りを100本、その後に麒麟歩を復習し、ウォーミングアップは終了しました。

19時になると生徒が集まり始め、19時半まで肩や股関節の柔軟・圧腿を各自で行います。この時に、肩や仆歩の柔軟のコツなどを教わることができました。

19時半になり、基本功が始まります。まず劈掛拳の基本功と基本招式を原地(その場で行うという意味)で左右各20回づつ行います。基本功が体を劈掛拳に馴染ませる体操だとしたら、基本招式が劈掛拳の具体的な攻撃技術といえます。

劈掛拳の基本功は長拳や太極拳でも行いますが、実際に習ってみると、大事な要点を守れていなかった事が分かりました。また、基本招式はただ速くやればいいのではなく、ゆっくりでもいいので丁寧に正しく行い、力の正しい発し方を体に覚え込ませる事が重要だと気付きました。

劈掛拳の基本功は以下の8種類になります。

 

1.掄臂(前後)、2.双捆打、3.震臂、4.蘯肩、5.抽鞭、6.涮腰、7.烏龍盤打、8.展縮

基本招式は以下の9種類になります。

1.反劈手、2.単劈手、3.双劈手、4.横打(前後)、5.後横袖打、6.合子掌、7.穿掌、8.倒発烏雷、9.招捶

その後、長拳の基本功を行いました。

1.正踢腿、2.側踢腿、3.裡合腿、4.外擺腿、5.弾腿、6.蹬腿、7.両拍脚、8.拍脚烏龍盤打、9.弓歩衝拳、10.馬歩架打、11.仆歩穿掌

 

基本功は片道づつではなく、往復で行いました。通常は片道づつで次の動作に変わるので、滄州武術館では二倍の量を行っていることになります。また、踢腿は長拳でのやり方と大きな違いはありませんでしたが、弓歩衝拳・馬歩架打・仆歩穿掌は、長拳で一般的に行われている簡便なスタイルのものではなく、伝統的で、要求も細かく複雑でした。

そしてその後に、意外なことに、長拳の跳躍動作も練習しました。

1.二起脚、2.旋風脚、3.騰空擺蓮脚、4.旋子

ここまでが基礎練習となり、劈掛拳以外の武術を習う人も全員一緒にやります。ここから、劈掛拳を習う人とそれ以外の人達と別れて練習します。

滄洲武術館での基本功は、動作と動作のピッチが早く、実際に行う動作数よりもはるかに疲れました。他の団体の二倍の練習を半分の時間でやったような印象です。

ここからの練習は、基本招式に連環歩などの歩法を加えて行います。

まずその場で、10回左右交互に繰り返してから歩法で進みます。特に連環歩はかなり難しい歩法で、これに招法を加えると動作がさっぱり分からなくなります。しかし歩法の推進力が加わる分、当たった時の打撃力は倍増します。一昔前なら、これは秘伝だったはずです。内容は以下の通り。

 

1.単劈手、2.双劈手、3.横打(前後)、4.合子掌、5.鷂子穿林、6.倒発烏雷、7.招捶、8.単劈手三招、9.反劈手(三環套月)、10.抹面脚加双撞掌、11.単劈手加開門炮、12.単劈手三招加双劈手

 

基本紹式を一通り終えると、古謝先生から「うん、OK!じゃぁ套路をやろう」と、套路を習う事ができました。これは予想外でした。套路は全部で六段もあるのですが、わずか一時間もかからず、全て習い終えることができました。劈掛拳の套路は基本招式の組み合わせで構成されているので、基本招式さえできていれば、後は順番を覚えるだけでした。套路には無駄な虚飾がなく、実戦用法の塊で、武術好きが憧れる本物の武術でした。

また、休憩中の雑談で、劈掛拳の細かな要点や動作上の注意を教えて頂くことができました。前後の重心移動を明確に行うことや、前足の侵入や後ろ足の引き寄せ、大腿の絞り、腰の捻り、肋骨の絞り、胸や肩の緩めと張り、肩の振り方と使い方、肘の角度、前腕の纏絲、首の捻り、等々。昔風に言えば口伝・口訣といえる内容です。

そして練習の締めくくりに、古謝先生から双手剣をリクエストされました。古謝先生と親交の深い、合気道の座安先生がお越しになっていたこともあり、お礼も兼ねて僭越ながら表演させて頂きました。

滄洲武術館で練習されている皆さんには仲良く親切にして頂き、本当にありがとうございました。

皆さん真剣に武術に取り組んでおり、とても楽しく練習する事ができました。また一緒に練習したいと思っています。

滄洲武術館の練習は、運動量が多く、肉体的にはとてもハードでしたが、内容は劈掛拳の極意といえるものばかりで、訪問して良かったとつくづく思います。とても充実した経験となりました。

古謝先生、滄洲武術館のみなさん、本当にありがとうございました!

 

墨林窯 東京 双手剣師範代 永原智聡

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